黒歴史現在完了進行中(仮)

自由帳みたいなもの

好きなことで生きていくというありふれた幻想

たぶんこの類の言及というのは書籍でもwebでも
あらゆるところで語りつくされてしまっていて、
もはや僕ごときが語るまでもないことだとは思うし、
おそらく誰かしらの二番煎じになるだろうことは想像に難くない。

ただ僕はまがりなりにも、これまで好きなことをして生きてきたし、
それに対して思うところもいろいろあるので、
稚拙ではあるけれど、書き連ねていこうと思う。

話に入る前に
まず、前提として認識しておきたいのは、
この場合、好きなことで生きていくというのは
その「好きなこと」がメインの職業である想定だ。
仕事をしながら、副業として稼ぐ人はまた別の扱いとして考える。
以上を念頭に置き進めて、話を進めよう。



タイトルにある「好きなことで生きていく」というのは
youtubeの広告に使われているコピーだ。
これはyoutuberと呼ばれる動画作成者がモデルとして考えられているのだろう。
彼らは、自分が面白いと思うものをネット上で繰り広げ、
それを基に生計を立てているらしい。
全くもってすごいことだと思う。

このように一般にクリエイターと呼ばれる人種は、
面白いことをしたり、楽しそうに仕事をしているように見えるから、
普段、退屈な仕事をしている人やこれから進路を決める学生から見れば、
とてもキラキラとしていて、まぶしい世界に見えるだろう。
実際そういう人もいるのかもしれないが、
そう見えるというのが正しい見え方だろうと思う。

ただ、これまでtwitterやFBなどのSNSをやってきて思うのは、
我々の目に映る他の人たちの姿というのはあくまで断片的なものにすぎないということだ。
当然、実際の人間関係というのももちろんそうなのだが、
WEB上においては情報がより限定的になってしまうから、印象が肥大化してしまう。
マスメディアにおいてもそれはあまり変わらないだろう。

だからもし仮に、好きなことを職業にできたとして、
楽しいことばかりかといえば、当然そうではないことはすぐにわかる。


まずお金の問題だ。
多くの場合、誰かの「好きなこと」というのはその他の人も好きな場合が多い。
そうなると、需要と供給の関係で、当然競争率が上がる。
そして、好きなことだからとほぼ無給でそれをする人が出始めるだろう。
例としてあげれば、学生インターンなどがわかりやすいだろうか。

そうなるとどのようなことが起こるか。
当然相場がどんどんと下がってくる。
やりたいことを仕事にできる人と経費を安く抑えられる雇用側。
このように見せかけのwin-win関係が生まれるのだ。

下がってしまった相場は簡単には上がらない。
こうして、一般に「好きなこと」として語られる職業はどんどんと薄給になっていく。
そうなれば、好きではないことも仕事にしなければならない。
仮に業種が同じだとしても、モチベーションの上がらない仕事も増えてくるだろう。
会社員だとすれば、なおさらそういう機会も多い。

そうなってしまえば、あとは早い話だ。
「好きなもの」がどんどんと作業になっていく。
「好きだったはずのそれ」はお金を稼ぐためのツールへと成り下がっていくのだ。
そして、費用対効果なんて考え始めるようになって、終わり。
もはや退屈な仕事とさして変わらない。



しかし、「好きなこと」を仕事にしている人がいるのも事実だ。
上にあげたyoutuberやIT系のベンチャーの人たちである。

これに関しては両者、別個の理由があるように思う。
別に才能とか運とか以外の話だ。

前者はは単純にはじめは副業で始める人が多いということ。
作家なんかそういう人が多いなんて言う話も聞く。
そして後者。
彼らに関しては「好きなこと」の性質が異なるように思う。

具体的に言うのであれば、
スポーツをするのが好きなのと、
勝つこと、あるいは勝つためにどうするか考えるのが好きかという違いだ。
これは似ているようで大きく違う。

前者はその行為自体が好きだから、それで勝ちたいと願うのに対して、
後者は勝つことが目的だから、その手段に関しては替えが効くのである。
当然、成功する可能性が高いのは後者だろう。
そして彼らは「好きなことで生きている」わけだ。



さて、ここで一つ思うことがある。
「好きなこと」ある人はまあたぶん大多数だと思うんだけど、
それってもしかして、何かに押し付けられたものなんじゃないの、ってこと。

別にマスゴミとか陰謀論とかそういうことを言いたいんじゃなくて、
自分自身でそれに縛り付けられてはいませんかって。
案外やってみたり、見てみたら、好きになるものが
その辺にたくさん転がってたりしてね、なんて。