黒歴史現在完了進行中(仮)

自由帳みたいなもの

付かず離れずなふたり

帰り道。人通りの少ない道を中学生の男女が歩いている。
距離感はそんなに近くなくて、仲はいいけど付き合っているわけではなさそうだ。
せいぜい幼馴染と言った所か。
大きめのバッグを共に持っていたから、部活帰りにたまたま校門辺りで会って一緒に帰っているのだろうか、などと考えていると、
男の子が愚痴るようにこうぼやく。
「俺さ、ほんとモテないんだよね、彼女ほしいのになあ」
「どこかにおまえのこと、好きな人がいるかもしれないじゃん」
女の子が間髪入れずにこう言った。顔は見えない。
傍から見ているこちらとしてはいろいろと邪推してしまう。
二人の顔も見えないから、なんだか少女漫画のワンシーンみたいだ。
「そうかな、やっぱり後輩とかにいたりするのかな」
少年はこちらの妄想も気にしないような口調で言う。
本当にいたのか、鈍感系主人公。とはいえ興味がなければそんなものか。
「後輩とか絶対やめたほうがいいよ」
と少女も相変わらず軽い口調で切り返す。

そこで彼らとは道を違えたからその後どんな話が続いたのかはわからない。
きっと何ごともなく終わって、また明日から普通に過ごしているのだろう。
僕が考えたのはまぎれもなく妄想でしかなくて、彼ら自身にはそんな意図なんて何もないのかもしれない。
ただ、僕は中高が男子校だったから、帰り道にあんな感じで女子と何気ない会話をしながら、二人で歩くなんてことにずっと憧れていた。
それはもう絶対に経験することはできなくて、だからこそ余計にまぶしく見えて、勝手に羨ましがっている。
手に入れられないとわかったものは、自分の中でおのずときれいになってしまうものだ。
だから彼らの姿は僕にとって二度と会えなくなった友達とちょっとだけ似ていて、
懐かしさとちょっとしたさみしさを覚えるのだ。